病気の話

くすりこばなし(その3)

薬ができるまで

病気の治療に役立ちそうな薬が発見されたり設計されると、まず研究室で動物を使った実験などが行われます。
この段階では薬がどのように作用してどのような効果をもたらすのか、健康に影響を及ぼすような毒性がないかといった情報を集めます。
多くの薬は毒性が強すぎたり有効性がないことが明らかになり、この段階で失格になります。

この後も有望な薬については、治験薬として厚生労働省に申請を行います。
治験薬は人間で臨床試験を行います。臨床試験は薬の有効性を明らかにするだけでなく、副作用の種類や発生頻度、その要因(年齢、性別、他の疾患、他の薬物の使用など)の解明も重視しています。
ここがクリアできれば、新薬として厚生労働省に申請します。

厚生労働省ではすべての情報を審査し、その薬が有効で安全な製品として販売できるかどうかを決定します。こうして承認された薬は、はじめて患者さんの治療に使えるようになります。大体、ここまでの段階で約10年間かかります。平均的な目安としては、研究室で検討した4000種類の化合物のうち約5種類だけが人間での試験を受ける段階へと進み、人間で試験された5種類の薬のうち承認されて販売できるようになるのはわずか1種類程度です。

新薬が承認されると、製薬会社は新薬の使用の追跡調査をして、販売前には見つけられなかった新たな副作用があれば、すぐに厚生労働省に報告しなければなりません。
医師や薬剤師も、新薬の追跡調査に参加して情報提供などを行うようになっています。

うした追跡調査が重要な理由は、薬を販売する前はたとえ包括的な試験を行ったとしても、比較的よくみられる副作用(1000回に1回程度起こるもの)しか検出できないからです。1万回に1回起こるような(あるいはもっと頻度が低い)重大な副作用は、販売後にしか発見できません。薬が重大な副作用を引き起こす証拠が新たに見つかった場合には、承認が取り消されることがあります。
このように、病気を治す薬が世に出るまでには、多くの試練があると言えるでしょう。

記事が掲載された仙台整形だより

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