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病気の話

腰痛について(その3)

副院長 兵藤 弘訓

腰痛の分類(Vol.11の続き)

● 3)非特異的腰痛

 神経根以外の骨や関節、靱帯、筋肉の障害によって生じる腰痛とされ、その中のどこが痛みの原因になっているのかを診断できない腰痛のことです。このような腰痛では、よく診断に用いられているレントゲン写真やMRIなどでは加齢的な変化くらいしか写らないため、その原因となっているところを画像上の異常として捉えられません。また、たとえ椎間板ヘルニアや脊柱管の狭窄、腰椎の不安定な動きといった異常がみられても、症状に関係していないものもあるため、痛みとの関連性を判断するのが難しいことがあります。現在のところ、このような痛みの原因の診断は、椎間板や椎間関節など原因となっていると思われるところに局所麻酔薬を注入し、腰痛が消えるかどうかで行っています。


 a) 非特異的急性腰痛

 米国やイギリスのガイドラインによれば、非特異的急性腰痛では単に安静にして寝ているだけの治療は推奨されていません。むしろ、できるだけ活動性を維持しながら、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などを用いて痛みを和らげる治療が推奨されています。しかし、痛みのため身動きもとれないような場合はこの限りではありません。
 非特異的急性腰痛の中でも突然に生じる激烈な腰痛は、「ぎっくり腰」とも呼ばれています。ドイツではその様子から「魔女の一撃」などと名付けられています。私たちはこの「ぎっくり腰」に対して椎間板内に麻酔薬を注入する椎間板ブロック療法を行ってきました。その結果、椎間板由来のものが70%を占め、残りの30%が椎間関節あるいは仙腸関節(仙骨と骨盤をつなぐ関節)由来のものと分かりました。これまで、その多くが椎間関節由来と考えられていたのですが、その割合は予想外に低いことも分かりました。「ぎっくり腰」に対する椎間板ブロックは即効性があり、原因も診断できる有用な治療法です。


 b) 非特異的慢性腰痛

 非特異的慢性腰痛も椎間板、椎間関節、筋・筋膜など由来のものが考えられていますが、その痛みの原因を探ることは急性のもの以上に難しいことがしばしばです。椎間板や椎間関節由来の痛みは、以下のような方法で診断されますが、偽陽性率(間違いを正解とする確率)も高く、いまだ多くの人が納得できる方法とはなっていません。さらに、慢性腰痛の場合は、その痛みの持続に社会的、精神的要因が影響するといわれていますので、なおさらです。
 椎間板由来の痛みについては、腰椎前方固定術後に腰痛が消失することや、局所麻酔下の腰椎手術時に線維輪や後縦靱帯を刺激すると腰痛を感じることで、その存在が推測されていました。現在行われている診断法も、椎間板内に造影剤を注入(椎間板造影)し、同じ腰痛が再現するかどうかを目安に行われています。これによれば、椎間板由来の痛みは全体の約40%を占めるといわれています。
 一方、椎間関節由来の腰痛については、椎間関節ブロックによる除痛効果によって診断されます。その臨床的特徴は、腰をうしろにそる動作(後屈)が制限されていることと、その時に腰痛が再現すること、殿部や大腿後面ないし後側面に痛みがひびくことです。一般に、高齢者に多く、背筋に限局した圧痛がみられ、腰痛は片側で、患者さんが痛いところを指し示すことができるといわれています。
 非特異的慢性腰痛の治療には、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬物療法、温熱療法や筋力訓練といった理学療法、各種ブロック療法などの保存療法が行われています。しかし、欧米ではレントゲン写真やMRIなどにみられる加齢的な変化だけをもとに、金属を使用した腰椎の固定術や人工椎間板置換術が盛んに行われています。これらでは高額な器材が必要で、その治療成績もまだ安定しておらず、さらに、合併症の頻度も高く、再手術となる例も少なくないといったことがいわれており、決して安易に行うべきではないと考えています。このような非特異的慢性腰痛の治療には、従来どおりの保存療法が優先されるべきです。


  背骨の構造 図1(仙台整形だよりVol.10より)


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